﻿back kotoribg
fadein 2

music bgm_yasumi


「ぶぇくしょんっ！　っ……」

　朝倉純一は寒空の下、盛大にくしゃみをする。
#NEXT

　クリスマスももう目前となった日曜の昼下がり、純一の
姿は花より団子のテラス席にあった。

「流石に外は寒かったな……」

　純一は串団子と一緒に注文した、少し温くなった抹茶を
啜る。
#NEXT

　真冬の、それも休日の甘味処に男独りというのはいかに
も寂しい光景であったが、別に罰ゲームという訳ではない。

「ことり……まだかよ。凍死しちまうぞ」

　純一は、聖歌隊に顔を出している恋人の白河ことりを待っ
ているのだ。
#NEXT

「ま、早く来すぎた俺も悪いんだけど、さ」

　串団子を口に含むと、純一は周りのすっかり葉が落ちて
しまった木々の景色に目を向ける。

「冬に桜が咲いてないってのは自然……なんだろうな」
#NEXT

　一年中桜の咲き誇る島、初音島。

　そう言われていたのも今は昔で、島の桜の植生が一般的
な桜同様に春咲いて、春散るようになってしばらく経つ。

　その間に、純一とことりは風見学園を卒業し、それぞれ
大学と短大に進んでいた。
#NEXT

「でも、やっぱり俺の中ではまだまだ不自然だな」

　しみじみと言葉にしたところで、純一は抹茶を飲み干す。
#NEXT

「それにしても、遅い……」

　串団子も既に腹の中に収めた純一は手持ち無沙汰になる。

　ことりと一緒にいる時はあまり出てこない言葉が喉元ま
で上がってくる。
#NEXT

「はぁ、かった……っ？」

　その言葉を最後まで口にする直前――純一の視界は突如
ブラックアウトする。
#NEXT

mfade

「だーれだっ♪」

　顔に感じる冷たく柔らかい感触と首の後にかかる少しだ
け弾んだ温かい吐息。
#NEXT

　そして、微かに鼻孔をくすぐる甘い香水の匂い。

　間違いない、純一の視界を奪った犯人は――
#NEXT

「太郎」

「……私、女の子だよ？」

「すまん、花子」

「そんな名前じゃないよ。もう……ちゃんと答えてよ朝倉
　君」
#NEXT

　少し拗ねたような声音とともに、ぐらぐらと頭を揺すら
れる。意地悪も少々度が過ぎたようだ。

「わかった、わかった。手をどけてくれ、ことり」

「うん！　正解♪」

　純一の視界がようやく闇から解放される。
#NEXT

music bgm_kotori

「おいっす、朝倉君。待った？」

「おいっす、ことり。俺も丁度四半世紀ほど前に来たとこ
　ろだ」

「またまた、ご冗談を」

　くすくすとことりが笑う。
#NEXT

「ことり、座らないのか？」

　立ったままのことりに隣を促す。

「ううん、大丈夫。朝倉君のももう食べ終わってるみたい
　だし」
#NEXT

「そうか。ならこれからどうする？」

「それじゃあ、桜公園まで少し歩こうよ」

「ガッテン承知」

　支払いを終えて、純一はことりと並んで歩き出す。
#NEXT

「えいっ」

　純一の右腕ががっちりとことりにホールドされる。

「お、おい、ことり」
#NEXT

「ふふ、いーのいーの。さっき真面目に答えてくれなかっ
　たバツだよ」

「あれは、なんつーか、『恋人っぽい』感じがして恥ずか
　しいじゃないか……」

「別にいいんじゃないかな？　私と朝倉君は『恋人同士』
　なんだし。それに」

　純一の顔を見上げながら、ことりは続ける。
#NEXT

「前みたいに私は人の心がわかるワケじゃないから。だか
　ら、私は自分の気持ちをどんどん周りの人に伝えていこ
　うって。朝倉君も私にそうしてくれると嬉しいな」

　そう言って、ことりは純一の肩に頭を預ける。

「さいですか……」

　純一は右腕から広がることりの温かさを感じながら、頬
をかく。
#NEXT

　そうしている間にふたりは例の場所に到着する。

「やっぱり、ここか」
#NEXT

　ここは、ことりと二度目の邂逅をした場所。

　ことりとの多くの時間を積み重ね、そして互いの想いを
確かめ合った場所。

　今は周りの木々と同様に葉を落としている、桜の大木。
#NEXT

「うん、ここだよ」

　ことりは純一の隣を離れると、そっと大木の幹に触れる。

「やっぱりここは静かでいいね」

　振り返ることりの髪が、風にそよぐ。
#NEXT

「えっと……、それでね、朝倉君。ひとつ大事な報告があ
　るの」

　つんつんと人差し指同士を合わせながらことりは純一を
見る。
#NEXT

　恋人同士がふたりきりになって報告してくる大事なこと
なんてそうそう多いものじゃない。

　純一の脳が珍しく高回転する。
#NEXT

　別れ話は有り得ないし、かといってプロポーズには時期
尚早の感がある。

　ともすれば、自ずと答えは絞られる。

　――まさか……。
#NEXT

「あのね、私……」

「わかった！　ことり」

　ことりを手で制して、純一は腹をくくる。
#NEXT

「ことりの両親には俺から挨拶に行くし、暦先生にもきっ
　ちりと殺されてくるから安心してくれ」

「えっと、それは嬉しいけど、……何の話？」

きょとんとことりは小首を傾げている。
#NEXT

「……ん？」

「朝倉君は……、何だと思ったの？」

「あ、いや、なんでもない。こっちの話だ」

「そ、そう……」

　なんとなくことりにも純一の考えていた事が通じてしまっ
たらしく、お互いに赤くなってしまう。
#NEXT

「そ、それで？　何の話だったんだ？」

「えっとね、私は短大の聖歌隊からソロのヘルプを頼まれ
　たって言いたかったんだけど……」

「そ、そうか。良いんじゃないか？　うん」
#NEXT

　こほん、と咳払いをして純一はなんとか平静を取り戻す。

「で、なんでそんな顔してるんだ？」

　ことりは少しだけ困ったような顔をしていた。
#NEXT

　ヘルプとはいえ、ソロを任されたのだ。実力を認められ
たという事だろうし、歌が好きなことりならばここは喜ぶ
場面のはずだ。

「うん……。もちろん今回のヘルプの話は悪い話じゃない
　し、私としても嬉しかったんだけど、人前で歌うのは本
　当に久しぶりだから……」
#NEXT

「上手く歌えるか不安、だと？」

「うん、それもあるんだけど……」

　ばつが悪そうにことりは苦笑いを浮かべる。
#NEXT

「やっぱり、前の事もあって……、私でいいのかなって。
　聖歌隊のみんなの中で他にもやりたい人が居たんじゃな
　いかなって思っちゃうんだよね」

「それはあるかもしれないけど。でも、ことりの歌は掛け
　値なしで上手いと思うぞ？　それはこの俺が保証しよう」

　純一は左拳で自分の胸を大仰に叩く。
#NEXT

「ありがとう。でも、途中で寝ちゃったら他の人には保証
　できないよ？」

「むむむ、バレておったか……」

「バレバレなのだよ、朝倉君」

　そうしてふたり笑い合う。
#NEXT

「でも、不安なまま本番を迎えるのは良くないし。うーん
　そうだな……」

　数秒考えて、純一はひらめいたとばかりに手のひらを拳
で叩く。
#NEXT

「なぁ、ことりさんや。この俺がマネージャーとして一日
　限りの復活をするからさ、思う存分歌ってみたらどうだ？」

「練習、するってこと？」

「そーだ。マネージャーとして、ことりの歌にダメな所が
　あればバンバン指摘してやる。だから歌ってみろよ」
#NEXT

「うん、わかった。それじゃあマネージャーさん、よろし
　くお願いしますね」

　ぺこりと頭を下げると、ことりは大木に背を預け、いつ
ものように両手を胸の前で組む。
#NEXT

「……」

　ことりは少しだけ大きく息を吸うと、静かに歌い始める。

　いつも通りのことりの歌声に純一は耳を傾ける。
#NEXT

　それから何曲か歌ったところで、ことりの歌の練習は終
わった。

「ふぅ……」

　ことりは大木に背を預けたまま、ゆっくりと腰を下ろす。
#NEXT

「ことり、疲れたか？」

「ううん、大丈夫」

　純一の問いにことりは頭を振る。
#NEXT

「お昼食べてないから少しお腹が空いちゃって。あはは、
　面目ない」

「そっか。それじゃあクレープでも……って、今食べたら
　俺はともかくことりは夕飯が食べられなくなっちまうな」

「そうだね。クレープは半分こでもちょっと重いかな」

「わかった。ちょっと待ってろ」
#NEXT

　純一はことりの元を離れると、近場の自販機でホットの
コーヒーと紅茶を買ってダッシュで帰還する。

「ほれ」

　ことりに紅茶を渡すと、空いた手を握る。
#NEXT

　それから、少し大きめの栗まんじゅうをイメージ。

　純一のカロリーを消費して生み出された栗まんじゅうを
ことりに手渡す。

「これくらいなら食べても平気だろ？　甘いものは疲れた
　時に良いしな」
#NEXT

「うん、ありがとう。でも、いつ見ても不思議なチカラだ
　よね」

　栗まんじゅうを頬張りながら、ことりがまじまじと純一
の手を見つめる。
#NEXT

「まあな。でも、今日の和菓子はいつもと少し違うんだぜ？」

「そうなの？　いつも通り甘くて美味しいよ？」

　首を傾げることりに、純一はちっちっちと指を振る。
#NEXT

「今日のには一段と、俺の愛と本番へのエールを込めたの
　でした」

「あ……」

　ことりの顔が瞬時に赤く染まるが、恐らく純一の顔も大
差はないだろう。
#NEXT

「……さっきの歌だけどさ」

「うん……」

「良かったと思うぜ。周りは気になるのかもしれないけど
　さ、本番もことりらしく歌えばきっと大丈夫だ」
#NEXT

「うん、そうだね。ありがとう……、朝倉君」

　にっこりとことりが笑う。
#NEXT

「よし、人心地ついたことだし、そろそろ帰るか。日も暮
　れるし、送ってくぞ」

「うん。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」

　立ち上がった純一の右腕に再びことりが腕を絡ませる。

「……おう」

　そうして、ふたりは桜の大木の前を後にした。
#NEXT

music bgm_gakuen

　本番の日は、あっという間にやって来た。
#NEXT

「……なんで俺がこんなに緊張してるんだ？」

　純一は音楽会が行われる会場の前でそわそわしていた。
#NEXT

　そして、そろそろ中に入ろうかというところで知った顔
に声をかけられる。

「こんにちは、朝倉君」

　純一が振り返ると、ことりの親友のみっくんとともちゃ
んがいた。
#NEXT

「おう。ふたりともことりの応援か？」

「まぁ、そんなところです」

「朝倉君も彼女さんの晴れ姿を見に来たんですか？」
#NEXT

　にやにやとふたりが純一を見る。

「……まぁ、そんなところだ」

　頭を掻きながら純一は答える。
#NEXT

「ふふふ、それじゃあこんなところでモタモタしてちゃ、
　ダメですよ。もう本番も始まっちゃいますし」

　ふたりに背中を押されながら純一は会場に入る。
#NEXT

mfade

　会場に入って間もなく、重苦しいパイプオルガンの演奏
が始まり、聖歌隊の集団が登場する。

　それから純一のよく知らない曲目が伴奏付きやアカペラ
で次々と歌われていく。
#NEXT

fadeout 2
back ev013
fadein 2

　いよいよ聖歌隊の歌もいよいよ最後の曲を迎えたところ
で、集団の中から待ちに待った姿が現れる。

　白を基調としたローブを纏ったことりの姿は見た事がな
かったので新鮮さを感じる。
#NEXT

　ことりは観客の中に純一の姿を見つけたのか、こちらに
笑顔向けてからお辞儀をひとつ。

　それから、いつもの様に胸の前で手を組み、一呼吸して
からことりが歌い出す。
#NEXT

music bgm_kando

　流れるようなことりの歌声。

　その衣装と場所が相まって、ひとりスポットを集めるこ
とりの姿はまるで天使か聖母のように見える。
#NEXT

　会場中が静かだった。

　みんながみんな、ことりの歌に聴き入っている。

　合間に入るオルガンの伴奏すら邪魔に思える程に。
#NEXT

　そして、ことりが歌い終え、お辞儀をすると、万雷の拍
手が会場を駆け巡った。

　観客だけでなく、ことりの周りを囲む聖歌隊員もそれぞ
れことりに笑顔と拍手を送っている。
#NEXT

「よかったな、ことり」

　その様子を見ながら純一は呟くと、ことりに改めて大き
な拍手を送った。
#NEXT

mfade

fadeout 2
back kotoribg
fadein 2

　本番が終わった後、純一はみっくんとともちゃんと一緒
にことりが現れるのを待っていた。
#NEXT

music bgm_kotori

「ごめんねー、みんな。おまたせしちゃって」

　私服に着替えたことりがこちらへとやって来る。
#NEXT

「あ、ことりお疲れ。とっても良かったよ」

「うんうん。バンドの時とひと味違って、なんだか感動し
　ちゃった」

　みっくんとともちゃんがことりに寄って行きながら声を
かける。
#NEXT

「うん、ありがと」

　ことりも笑顔でそれに応える。

「ほらほら、なにしてるんですか？　朝倉君」

「愛しの彼女さんに言わなきゃいけないコトがあるんじゃ
　ない？」

　完全に声をかけるタイミングを逃していた純一に、ふた
りは意地悪そうな笑みを浮かべる。
#NEXT

「まぁ、そのなんだ。すっごい良かったぞ、ことりらしく
　て」

　ことりの歌には勿論感動したのだが、それを表す言葉を
持ち合わせていない純一は、とりあえずシンプルにことり
を褒める。
#NEXT

「ありがとう。これもひとえに朝倉君のおかげなのですぞ」

「俺の？」

「うん。だっていつもみたいに朝倉君に聴いてもらってる
　つもりで歌ったから。だから緊張も失敗もしなかったん
　だよ」

　満面の笑みでことりは純一に感謝を述べる。
#NEXT

「ことりったら、惚気？」

「はいはい、ごちそうさま」

　冷やかすつもりだったふたりはすっかり毒気を抜かれた
ようで、苦笑していた。

「あはは、まぁそんなところです」

　親友の前ということもあってことりはいつも以上に素直
なリアクションだ。
#NEXT

「あ、そうだ。みんな久しぶりに集まったんだ、せっかく
　だしこれからことりのお疲れさん会でもしないか？」

　純一は全員を見回しながら自らの思いつきを提案する。

　その提案にともちゃんとみっくんは顔を見合わせた。と、
同時に首を振る。
#NEXT

「せっかくのお誘いだけど……」

「うん、ふたりでいっといでよ」

「そうか？」

「それがいいよ。私たちおじゃま虫は退散するから」
#NEXT

「じゃあね、ことり。また今度」

「う、うん。またね、みっくん、ともちゃん」

　純一とことりはふたりを見送る。

「そいじゃ、俺たちも行こうか」

「……うん」
#NEXT

　純一はことりに並んで歩き出そうとするが、ことりはや
や早足で進んで行く。

「ことり？」

　ことりの足取りは変わらずにつかつかと早い。
#NEXT

「おーい、ことりさんや？」

　ことりの背中からただならぬ雰因気を感じ取った純一は
慎重にことりに並ぶ。
#NEXT

「むーーっ！」

　純一の方を向いたことりは見事にふくれっ面だった。
#NEXT

「朝倉君、ヒドいよ。今日はクリスマス・イブなんだよ？
　それなのに他の女の子を誘うなんて失礼です」

　形の良い眉を上げながらびしっと指を立てる。

「わ、悪かったよ」

「ダメです、許してあげません。ですからお詫びを要求し
　ます」
#NEXT

　先ほどまで指を立てていた手を広げると、くいくいと純
一に催促する。

「そうは言っても……」

　少し思案してから、純一はようやくひとつ提案する。
#NEXT

「それじゃ歌を、ことりの歌を聴きたいな。さっきはみん
　なにだったけど、今度は俺のために歌ってくれよ。それ
　を恋人として聴く。どうだ？」

「それだけですか？」

　ジトーっとした目でことりが純一を見つめる。
#NEXT

「っていうか、朝倉君が何かしてくれるワケじゃないんで
　すね？」

「すまん、これといって思いつけなかった」

「……まあ良いです。私も、そのつもりだったし。という
　事で、追加要求です」

「な、なんだ？」
#NEXT

「せっかくのイブに歌だけだなんて味気ないと思うの。だ
　から、朝倉君のお家でのクリスマスパーティを所望しま
　す」

「へ……？　そんだけ？　それは別に構わないけど」

「やった♪　……コホン、ならばよろしい」

　ことりはようやく機嫌を直してくれたようだ。
#NEXT

「よしよし、そうと決まれば行きますぞ、朝倉殿」

「行くってどこに？」

「商店街で買い出しに決まってるでしょ。ほらほら急いだ
　急いだ」

　それから食材やらケーキやらを買いにふたりは商店街に
向かった。
#NEXT

music bgm_party

「ほぇー、すっげぇなぁ」

　朝倉家へと帰ってきてしばらくの後――純一の前に滅多
とお目にかかれない料理の集団が並ぶ。
#NEXT

「時間がなかったから半分ぐらいは出来合わせになっちゃっ
　たけど、腕によりをかけたよ」

　普段はなかなか使われる事の無い純一のエプロンを畳み
ながらことりがテーブルにやってくる。
#NEXT

「それじゃ、始めるか」

「うん」

　ふたりはスパークリングワインの入ったグラスを掲げる。
#NEXT

「メリークリスマス、ことり」

「メリークリスマス、朝倉君」

　ちりんとグラスを鳴らす。
#NEXT

「やっぱり、ことりの料理はいけるな。うん、ウマイ」

「ふふ、ありがと。どんどん食べてね」

　絶えない笑いと、美味しい料理。

　ふたりの時はあっという間に進んでいく。
#NEXT

　デザートのショートケーキも食べ終えたところで、こと
りが静かに席を立つ。

「お、いよいよメインイベントだな」

　純一は、胸の前で手を組み、歌う体勢になっていること
りを見つめる。
#NEXT

music bgm_kando

「……」

　小さく息を吐いて、ことりが歌い出す。
#NEXT

　純一とことりの、ふたりだけの音楽会。

　昼間よりも、ずっと近くで聴こえることりの声。歌って
いる曲も違うようだ。

　それからしばらく、ことりの歌だけが朝倉家に響く。
#NEXT

　やがて、純一が聴き入っている間にことりの歌は終わり
を迎えていた。

「ありがとう、ことり」

　純一は言葉にならない感動を拍手で伝える。
#NEXT

「あはは、どういたしまして」

　ことりがぺこりとお辞儀をする。
#NEXT

「ねえ、朝倉君」

「ん？」

「今回の歌はいつもと少し違ったんだよ？　なんだか分か
　る？」
#NEXT

「そうなのか？　いつも通り、めちゃめちゃ上手かったけ
　どな」

　首を傾げる純一に、ちっちっちとことりが指を振る。

「早く答えないと、バツゲームだよ？」
#NEXT

「え、まじ？」

　うーんと純一は考え込む。

　そういえば、いつもより歌い上げる歌詞が情熱的だった
ような？

　純一を見つめる瞳もいつもより熱がこもっていたような？
#NEXT

「はい、時間切れ」

　いつの間にか、眼の前にことりが来ていた。

「ちょっとま……」

　純一の言葉は最後まで発せられることなく――その発信
元を塞がれる。
#NEXT

「……？！」

　口の中に広がる、甘さと酸味。

「うん、バツゲーム終了♪」

　ことりがひょいと純一から離れる。
#NEXT

「……で？　正解は何なんだよ？」

　いきなりの事態に耳たぶまで赤くなりながら純一はこと
りに尋ねる。
#NEXT

「正解は……、今回は一段と朝倉君への愛を込めて歌った
　のでした♪」

　ことりがいたずらっぽく笑って舌を出す。

「あ……」

　その仕草に、思わず顔が綻んでしまう純一であった。
#NEXT

　――Ｆｉｎ
#NEXT

mfade

fadeout 1

wait 5
exit